臨床神経学

原著

AIDSに合併した進行性多巣性白質脳症8例の臨床的検討

新井 憲俊1)2), 岸田 修二1), 頼高 朝子1), 大田 恵子1)

1)都立駒込病院神経内科〔〒113-8677 東京都文京区本駒込3-18-22〕
2)東京大学医学部神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕

1985〜99年に8例のHIV-1感染にともなう進行性多巣性白質脳症(PML)を経験した.発症時神経所見として痴呆,動作緩慢,構音障害,片麻痺などをみとめた.いずれも発症時CD4陽性細胞数150/mm3以下と低値で,うち5例で20/mm3以下と著明な免疫不全状態であった.PML以外に中枢神経合併症としてトキソプラズマ脳症,中枢神経悪性リンパ腫,HIV脳炎,CMV脳炎をみとめた.発症後平均7.6カ月で死亡と予後不良であったが,発症後2年生存した例が1例あった.7例で病理解剖をおこない,いずれも広範な白質の軟化をみとめ,脊髄までおよぶ例も確認された.今まで本邦でまとまった報告はなく,有用な知見と考えられ報告した.

(臨床神経, 45:89−95, 2005)
key words:進行性多巣性白質脳症(PML), JCV, 後天性ヒト免疫不全症候群(AIDS), HIV

(受付日:2004年4月20日)