臨床神経学

試案・提案

アルツハイマー病診断・評価基準試案

東海林 幹夫1), 桑野 良三2), 朝田 隆3), 今川 正樹4), 樋口 進5), 浦上 克哉6), 荒井 啓行7), 井原 康夫8), 文部科学省特定領域研究「先端脳」ゲノム班

1)岡山大学大学院医歯学総合研究科 神経病態内科学〔〒700-8558 岡山県岡山市鹿田町2-5-1〕
2)新潟大学脳研究所附属生命科学リソース研究センター 遺伝子実験部門〔〒951-8585 新潟県新潟市旭町通一番町757〕
3)筑波大学医学専門学群臨床医学系 精神医学〔〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1〕
4)今川クリニック 精神科〔〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島6-4-10〕
5)国立療養所久里浜病院 臨床研究部〔〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5-3-1〕
6)鳥取大学医学部保健学科 生体制御学〔〒683-8503 鳥取県米子市西町86〕
7)東北大学大学院医学系研究科 先進漢方治療医学〔〒980-8575 宮城県仙台市青葉区星陵町2-1〕
8)東京大学大学院医学系研究科 神経病理学〔〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1〕

日本人アルツハイマー病の遺伝的危険因子(感受性遺伝子)を全ゲノム解析によって同定するため,2000年に「脳科学の先端的研究」(略称「先端脳」;領域代表者:井原康夫)が開始された.「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」を遵守し,各施設における倫理審査委員会の承諾のもとに本邦ではじめておこなわれている共同体(consortium)研究である.本研究では確実で均一なアルツハイマー病患者集団と正常対照者集団の遺伝子を対比して解析するために,従来のアルツハイマー病の診断や検査法の検討を元に診断評価基準試案を作成し,遺伝子を採取する医師,施設間で標準化をおこなった.この基準はアルツハイマー病の定義,DSM-IV,NINCDS-ADRDAおよびICD-10に準拠した診断基準,除外診断基準,必須およびより詳細な神経心理学的検査,必須および必要に応じた血液生化学的検査をふくむ広義の臨床診断基準と画像診断,生物学的マーカーおよび確定診断基準,臨床病型および類縁疾患からなっている.本試案をもとに,evidenceを有し,臨床的に広く使用される新たなアルツハイマー病の診断基準と評価法が本邦において確立されることが期待される.

(臨床神経, 45:128−137, 2005)
key words:アルツハイマ−病, 診断・評価基準, 先端脳, ゲノム班

(受付日:2004年7月7日)