臨床神経学

症例報告

腰髄MRIで馬尾前面の増強効果をみとめたpost-irradiation lumbosacral radiculopathyの1例

梅田 麻衣子, 成瀬 聡, 伊藤 晶子, 藤田 信也

長岡赤十字病院神経内科〔〒940-2085 長岡市寺島町297-1〕

症例は35歳の女性である.子宮頸癌の術後に放射線照射を受け,その8カ月後から下肢の筋力低下が進行した.下肢にほとんど感覚低下はなく,遠位筋優位にMMT 2レベルの筋力低下をみとめた.腰髄MRIで馬尾前面にガドリニウム増強効果をみとめた.副腎皮質ステロイドとワーファリンの併用療法で筋力低下は改善し,MRIでの増強効果も軽減した.腰仙部放射線照射後に発症した下位運動ニューロン障害を主体とするpost-irradiation lumbosacral radiculopathyと診断した.Post-irradiation lumbosacral radiculopathyは運動障害が主体であり,腰髄MRIで馬尾前面が増強される所見が診断上重要な特徴的な所見と考えられた.また,本症の治療には,副腎皮質ステロイドとワーファリン併用療法が有効であると考えられた.

(臨床神経, 45:758−761, 2005)
key words:放射線照射後神経障害, 腰髄MRI, 副腎皮質ステロイド, ワーファリン

(受付日:2005年3月29日)