臨床神経学

症例報告

不整脈源性右室異形成症に脳塞栓症を合併した1例

陣内 重郎1), 中根 博1), 北山 次郎1), 深堀 正美2), 井林 雪郎3), 飯田 三雄3)

1)国立嬉野病院脳神経内科〔〒843-0393 佐賀県藤津郡嬉野町大字下宿丙2436〕
2)同 循環器内科
3)九州大学大学院医学研究院病態機能内科〔〒812-8582 福岡県福岡市東区馬出3-1-1〕

症例は45歳女性である.平成12年に三尖弁閉鎖不全症に対して,三尖弁形成術を施行され,その際の心筋生検にて不整脈源性右室異形成症(arrhythmogenic right ventricular dysplasia:ARVD)と診断された.また,同時期より心房細動に対し抗凝血療法を開始された.平成13年7月1日14時頃,家事中に突然の左片麻痺が出現し,15時30分に当院へ救急搬送された.来院時の意識は1/JCSで,右共同偏視,構音障害,左上下肢の不全片麻痺と感覚障害がみとめられた.心原性脳塞栓症と診断し,ウロキナーゼの選択的動注による血栓溶解療法を施行し,部分再開通がえられた.その後,症状は軽快傾向にあったが,第6病日に脳梗塞の再発をみとめた.さらに第25病日には心室頻拍・心室細動を生じ,急性循環不全となり,同日に永眠された.ARVDに脳塞栓症を併発した症例はまれであり,貴重な症例と考えられた.

(臨床神経, 45:744−747, 2005)
key words:不整脈源性右室異形成症, 心房細動, 脳塞栓症

(受付日:2005年3月9日)