臨床神経学

短報

出血性梗塞を呈した前大脳動脈解離の1例

大村 真弘1), 寺井 正1), 重野 幸次1), 山脇 健盛2)

1)静岡市立清水病院 神経内科〔〒424-8636 静岡市清水宮加三1231〕
2)名古屋市立大学大学院医学研究科生物機能制御医学神経病態学(名古屋市立大学神経内科)〔〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1〕

経過中に出血性梗塞を呈した特発性前大脳動脈解離の1例を報告した.症例は56歳男性である.両側側頭部における拍動性頭痛を生じ,同日歩行障害を呈し入院した.下肢に強い右不全片麻痺をみとめ,頭部CTでは左前大脳動脈領域に梗塞をみとめた.第14病日に施行した脳血管造影では左前大脳動脈に“pearl and string sign”をみとめ,前大脳動脈解離と診断した.解離部からのartery to artery embolismの予防のため抗血小板薬を投与したが,経過中出血性梗塞をみとめた.出血性梗塞は心原性脳塞栓症で高頻度にみられる病態であるが,本例は脳動脈解離においても出血性梗塞を呈することを示す貴重な症例である.

(臨床神経, 45:41−44, 2005)
key words:脳梗塞, 動脈解離, 前大脳動脈, 出血性梗塞

(受付日:2004年3月24日)