臨床神経学

症例報告

Vibrio vulnificusにより髄膜脳炎をきたした1例

佐藤 達矢1)2), 稲富 雄一郎1), 米原 敏郎1), 藤岡 正導1), 橋本 洋一郎3), 平野 照之4), 内野 誠4)

1)済生会熊本病院脳卒中センター
2)(現)昭和大学医学部神経内科〔〒142-8555 東京都品川区旗の台1-5-8〕
3)熊本市立熊本市民病院神経内科
4)熊本大学大学院脳神経科学講座神経内科学分野

76歳男性例を報告した.既往にHCV陽性,肝硬変,肝細胞癌,糖尿病がある.2001年10月9日近海で獲れた魚を生で食べた.翌日より39℃台の発熱が出現し近医に入院した.同日ショック状態となり,翌日には頭痛,右視力低下が出現し,不穏状態となった.髄液検査で細胞数増多(4,693/μl)をみとめ,当科に転院した.血液培養でVibrio vulnificusが検出され,同菌による敗血症,髄膜脳炎と診断した.経過中DIC,呼吸不全を合併したが抗生物質その他の治療により徐々に改善し,右全眼球炎による失明の他にはほとんど後遺症を残さず自宅退院した.Vibrio vulnificusによる髄膜脳炎の報告はきわめてまれであり,いずれも本感染症で特徴的とされる致死的な壊死性筋膜炎をきたしていなかった.

(臨床神経, 45:18−21, 2005)
key words:ビブリオ感染症, 髄膜炎, 脳炎, 眼球炎

(受付日:2004年1月16日)