臨床神経学

症例報告

てんかん重積による脳障害の可逆性の早期鑑別:2症例におけるADC画像の有用性

渋谷 聡, 久永 欣哉, 瀬野 暢仁, 及川 崇紀, 望月 廣

国立療養所宮城病院神経内科〔〒989-2202 宮城県亘理郡山元町高瀬字合戦原100〕

てんかん重積の2症例に対し,急性期から重積状態離脱後まで頭部MRIによる検討をおこなった.1例では急性期に右大脳半球の拡散強調画像の高信号域に一致してapparent diffusion coefficient(ADC)が上昇し,別の例ではADCは低下していた.重積状態離脱後,ADC上昇例は脳損傷を残さず神経学的予後は良好であったが,ADC低下例は大脳皮質の層状壊死と痴呆を残し予後不良であった.ADCの上昇は細胞外性浮腫を,ADCの低下は細胞障害性浮腫を反映しているとされ,ADC画像はてんかん重積による脳障害が可逆性か非可逆性かの早期鑑別に有用であると考えられる.

(臨床神経, 44:615−617, 2004)
key words:てんかん重積, ADC画像, 脳損傷

(受付日:2004年1月24日)