臨床神経学

原著

事象関連電位による意思伝達装置―ALS患者のため―

音成 龍司1), 黒川 裕章2), 田之上 和也2), 伊賀崎 伴彦2), 村山 伸樹2)

1)音成神経内科クリニック〔〒830-0023 福岡県久留米市中央町38-17〕
2)熊本大学工学部電気システム工学科〔〒830-8555 熊本県熊本市黒神2-39-1〕

P300の原理を利用し脳波のみによる意思伝達装置を開発し,17名の健常者と5名の運動疾患患者に試みた.実験1は,はい,いいえなど縦に書かれた4つの短文のうち,1つの短文の背景の色を無作為に変化させ刺激とした.実験2は50音表を提示,実験3は縦横に並べた16個の絵文字を提示,まず,縦の列の背景の色を無作為に変化させ,次に目標がふくまれるとPCが判定した列のみを提示し,その中の1つの文字ないし絵の背景の色を無作為に変化させ刺激とした.加算平均した脳波のうち,刺激から300〜600 msecに最大陽性を示すか,あるいは,FFTをおこない,2〜5 Hzのパワースペクトル量を計算し,最大値を示す脳波を,目標に対する脳波としたところ,高い正答率を示し,脳波のみによる交信に成功した.

(臨床神経, 44:599−603, 2004)
key words:事象関連電位, P300, 筋萎縮性側索硬化症, 意思伝達装置

(受付日:2004年3月10日)