臨床神経学

症例報告

Buerger病に合併した若年性多発性脳梗塞の1例

来 真希子1), 宮下 光太郎1), 大江 洋史1), 西上 和宏2), 成冨 博章1)

1)国立循環器病センター内科脳血管部門〔〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1〕
2)同 心臓血管内科

症例は46歳女性である.Buerger病罹患中に高次脳機能障害を徐々にきたし,痙攣を合併した.脳MRIでは大脳皮質・皮質下の血管境界領域を中心とした多発性脳梗塞をみとめた.脳血管撮影検査で頭蓋内外主幹動脈に異常はみとめず,塞栓源や先天性凝固異常もみとめなかった.他の類似疾患は否定的であり,臨床的にcerebral thromboangiitis obliterans(CTAO)と考えられた.CTAOはBuerger病の約2%に合併するまれな病態で,本邦での報告はきわめて少ない.CTAOでは発症時が不明な血管性痴呆を呈することがあり,診断に留意する必要がある.

(臨床神経, 44:522−526, 2004)
key words:Buerger病(閉塞性血栓血管炎), 血管性痴呆, 脳梗塞, 若年発症

(受付日:2003年10月14日)