臨床神経学

短報

成人期に増悪した良性先天型ネマリンミオパチーで,生検筋に縁取り空胞と筋電図上神経原性所見のみを呈した1例

池添 浩二, 村井 弘之, 川尻 真和, 大八木 保政, 吉良 潤一

九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

乳児期発症で非進行性であったが,成人後に進行したネマリンミオパチーの29歳女性例を報告した.処女歩行は1歳7カ月.それまで日常生活に支障なかったが,21歳頃より四肢筋力低下の進行を自覚.顔面筋,頸筋,四肢近位筋優位に脱力があり,針筋電図では神経原性所見のみを呈した.筋生検では縁取り空胞をみとめ,本例の増悪には自己貪食機転の亢進が関与することが示唆された.ネマリン小体と縁取り空胞の形成には神経系の関与が推測されており,本例での針筋電図における神経原性所見のみの出現要因と考えられた.

(臨床神経, 44:450−453, 2004)
key words:ネマリンミオパチー, 縁取り空胞, 酸性フォスファターゼ, 自己貪食, 神経原性所見

(受付日:2003年9月1日)