臨床神経学

短報

皮疹をともなわず,投与数日後に発症したカルバマゼピンによる脱毛の1例

河野 豊1), 石井 亜紀子2), 庄司 進一1)

1)筑波大学神経内科〔〒305-8575 つくば市天王台1-1-1〕
2)つくば双愛病院神経内科〔〒300-1245 つくば市高崎1008〕

カルバマゼピン投与により脱毛を生じた1例を報告した.症例は52歳男性で,カルバマゼピン投与数日後にいちじるしい脱毛を生じ,投与中止後,すみやかに脱毛が改善した.頭皮をふくめて薬疹やアレルギー反応と思われる皮膚病変なく,甲状腺機能をふくめた血液検査にも異常はなかった.カルバマゼピンによって脱毛が生じることは知られているが,その発症機序は明らかにはなっていない.臨床経過を記載した報告は7例のみで,皮疹の有無や脱毛が生じるまでの期間がことなる症例があり,症例によりことなる機序で発症している可能性が考えられた.今後,カルバマゼピンによる脱毛の機序を解明する上で,臨床経過に留意し,症例を蓄積することが重要と考えられる.

(臨床神経, 44:379−381, 2004)
key words:カルバマゼピン, 脱毛, 副作用, 成長期脱毛, 休止期脱毛

(受付日:2003年11月6日)