臨床神経学

短報

開頭術により脳膿瘍が判明した被殻出血の1例

梅澤 良平1), 五十棲 一男1), 小松本 悟1), 福内 靖男1), 稲葉 真2)

1)足利赤十字病院神経内科〔〒326-0808 栃木県足利市本城3-2100〕
2)同 脳神経外科

症例は40歳の男性である.主訴は意識障害と右片麻痺である.以前より高血圧症,糖尿病,高脂血症を指摘されていた.就寝中に嘔気・嘔吐が出現し,構音障害,右手の痺れを訴えたため救急搬送された.CT上,直径約7 cmの左被殻出血がみとめられ入院した.入院後,意識障害が進行したため開頭手術の適応と判断され,第2病日血腫除去術がおこなわれた.術中,血腫腔に到達すると白色膿が大量に流出し,脳膿瘍内に出血が生じていたものと考えられた.臨床所見ならびに画像所見上,通常の高血圧性被殻出血とまったく鑑別できなかった脳膿瘍が開頭術ではじめて明らかになったまれかつ興味ある症例であり,報告した.

(臨床神経, 44:372−374, 2004)
key words:脳膿瘍, 高血圧性被殻出血, 開頭術

(受付日:2003年9月3日)