臨床神経学

症例報告

Megadolichobasilar arteryによる“若年性難治性高血圧症をともなう脳幹圧迫症候群”

石川 達也, 永山 正雄, 飯田 政弘**, 篠原 幸人

東海大学内科学系神経内科〔〒259-1193 神奈川県伊勢原市望星台〕
**東海大学専門診療学系耳鼻咽喉科

23歳頃より若年性難治性高血圧症のある37歳男性例を報告した.突発性の左進行性難聴,vertigo,dizzinessにて発症した.来院時,左聴力消失,左下肢深部腱反射亢進,前庭機能障害をみとめ,頭部MRIおよび脳血管造影にてmegadolichobasilar artery(MDBA)を確認した.さらに,MR cisternographyをおこなった結果,拡張・蛇行した右椎骨動脈が左椎骨動脈圧排を介して,左延髄上部腹外側部を強く圧迫・変形していることが判明した.文献上,延髄MRIについて記載のあるMDBA9例(本例をふくむ)のうち4例で延髄圧迫をみとめ,この4例すべてで高血圧症(うち少なくとも3例は若年性難治性高血圧症)をみとめた.また随伴症状として同側錐体路徴候(Opalski症候群)を呈した例も3例あった.延髄腹外側部には心臓血管中枢と錐体路が局在していることより,本例にみとめた若年性難治性高血圧症とOpalski症候群はMDBAによる延髄圧迫症候群としてとらええると考えた.今後,MDBAにこれらの延髄圧迫症候をともなった例では,MR cisternographyによる延髄腹外側部の評価が病態解析上必要である.

(臨床神経, 44:359−364, 2004)
key words:megadolichobasilar artery, Opalski症候群, 心臓血管中枢, 若年性高血圧, 脳幹圧迫

(受付日:2003年9月11日)