臨床神経学

症例報告

チョウセンアサガオの種子中毒による急性脳症の1例

桑原 武夫1), 大嶋 一美2)

1)新潟県立新発田病院神経内科〔〒957-8588 新潟県新発田市大手町4丁目5番48号〕
2)同 内科

チョウセンアサガオの種子を摂取し,意識障害と痙攣を中心とした急性の神経症状を呈した83歳男性を報告した.摂取1.5時間後に昏迷状態となり四肢に痙攣が出現した.2時間40分後に救急外来に搬入された.当時半昏睡状態で間歇的に強直性痙攣がみられた.瞳孔は散大し対光反射が消失し唾液の分泌と発汗が減少しており,腱反射は亢進しBabinski徴候が陽性であった.体温は37.6℃,血圧は167/99 mmHgであった.胃洗浄・活性炭・下剤投与後,対光反射は回復し,意識状態も徐々に回復してきた.摂取24時間後には神経症状は正常化し後遺症もなく退院した.チョウセンアサガオには毒性があり,摂取した患者は副交感神経抑制状態となり,眩暈,幻覚,意識障害,痙攣等の神経症状が出現する.アウトドアブームの影響で誤食の増加が予測される注意すべき神経症状を呈する食中毒の一つである.

(臨床神経, 44:355−358, 2004)
key words:チョウセンアサガオ中毒, 脳症, トロパンアルカロイド, 副交感神経抑制状態

(受付日:2003年9月3日)