臨床神経学

症例報告

女性化乳房およびエストリオール増加を呈したミトコンドリア脳筋症の1例

山崎 亮, 大八木 保政, 川尻 真和, 重藤 寛史, 池添 浩二, 古谷 博和, 吉良 潤一

九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕

症例は23歳男性である.21歳頃からしゃべりにくさを自覚した.性腺機能低下症はなかったが,女性化乳房をみとめた.軽度の知能低下,失調性構音障害,左感音性難聴,四肢および体幹失調,四肢近位筋の筋力低下がみられた.頭部MRIでの大脳・小脳萎縮,血液・髄液中の乳酸・ピルビン酸上昇および筋生検所見からミトコンドリア脳筋症と診断した.本例では,血液中エストリオールが軽度増加しており,筋組織をふくめた末梢組織におけるエストリオール生成亢進が考えられた.

(臨床神経, 44:291−295, 2004)
key words:ミトコンドリア脳筋症, エストロゲン, 女性化乳房

(受付日:2003年9月5日)