臨床神経学

症例報告

上眼瞼部に腫瘤を触知した慢性脱髄性多発ニューロパチーにおける多発性末梢神経腫脹のMRI,電気生理学的検査による検討

山本 敏之, 大矢 寧, 五十嵐 修, 豊田 千純子, 小川 雅文, 川井 充

国立精神・神経センター武蔵病院神経内科〔〒187-8551 東京都小平市小川東町4-1-1〕

多発性に末梢神経腫脹をみとめた慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)の46歳女性を報告する.四肢脱力,複視,一側性舌下神経麻痺,一側性顔面麻痺などが約13年の経過中に出没した.視診,触診で両側上眼瞼部に腫瘤をみとめ,脂肪抑制MRIで両側眼窩内の眼窩上神経腫脹,頭蓋外の上顎神経,下顎神経の神経腫脹を同定した.Blink reflexで異常をみとめたが,三叉神経領域の感覚異常はなかった.両側前腕の正中神経運動神経伝導ブロック部位に,MRIで非対称性の神経腫脹を確認した.CIDPの末梢神経腫脹は上眼瞼部の診察で発見されることがあり,神経腫脹部位の同定にはMRI,電気生理学的検査が有効であった.

(臨床神経, 44:286−290, 2004)
key words:慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP), 眼瞼部皮下腫瘤, 末梢神経腫脹, 三叉神経腫脹, 伝導ブロック

(受付日:2003年8月26日)