臨床神経学

症例報告

無症候性原発性胆汁性肝硬変を合併し,著明な呼吸筋障害を特徴とした慢性筋炎の1例

春日 健作, 佐藤 晶, 金澤 雅人, 小林 央, 田中 惠子, 西澤 正豊

新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通1-757〕

数年来の下腿のこわばりにひき続き下肢筋力低下が出現,その後約2年の経過で全身の筋力低下が増悪した37歳女性.傾眠傾向,四肢体幹筋の萎縮と筋力低下があり,呼吸苦はなかったが呼吸筋障害による著明な低酸素・高炭酸ガス血症を呈し,心筋障害と不整脈をみとめた.CK 4,207IU/l,筋生検では変性・壊死・再生線維をみとめたが炎症性細胞浸潤は軽度であった.原発性胆汁性肝硬変(PBC)に特異的な抗ミトコンドリアM2抗体が陽性であり,PBCを合併した慢性の筋炎と考えた.PBCを合併し著明な呼吸筋障害を呈した筋炎は4例の報告があり,慢性に経過し治療に抵抗する傾向がある.本例はステロイド内服と4回のパルス療法およびBiPAPにより,改善傾向にある.

(臨床神経, 44:280−285, 2004)
key words:慢性筋炎, 原発性胆汁性肝硬変, 呼吸不全, 陽圧式人工換気

(受付日:2003年8月21日)