臨床神経学

症例報告

Notch3変異(Arg169Cys)およびGOMを確認しえたCADASIL(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy)の1例

小谷 紀子1)*, 原 斉1), 藤村 晴俊2), 宮下 孟士1), 宮口 勝行2), 田平 武3)

1)淀川キリスト教病院脳血管内科〔〒533-0032 大阪市東淀川区淡路2-9-26〕
現 大阪大学医学系研究科加齢医学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕
2)大阪大学医学系研究科神経機能医学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕
3)国立療養所中部病院長寿医療研究センター〔〒474-8522 大府市森岡町源吾36-3〕

症例は64歳女性である.45歳時に脳梗塞を初発し,54歳までに4回脳梗塞を発症した.54歳から意志疎通困難の状態で寝たきりとなり,64歳時肺炎のため入院した.家族歴では脳梗塞が家系内に多発し,遺伝形式が常染色体優性と考えられ,患者の従兄弟1人にMRIで広範な強い白質変化を示していたことからCADASILをうたがった.末梢生検組織の電顕で血管壁に顆粒状の沈着物質(GOM)をみとめ,遺伝子解析によりNotch3の変異(Arg169Cys)を確認した.Arg169Cys変異は欧米では多数の報告例があるが,本邦では本例がはじめてである.

(臨床神経, 44:274−279, 2004)
key words:CADASIL, autosomal dominant, Notch3 mutation, GOM

(受付日:2003年5月20日)