臨床神経学

症例報告

両下肢先端より上行する異常感覚にて発症した頭蓋頸椎移行部の硬膜動静脈瘻の68歳男性例

小別所 博1)3), 上坂 義和1), 西宮 理気2), 蓮尾 金博2), 國本 雅也1)

1)国立国際医療センター神経内科〔〒162-8655 東京都新宿区戸山1-21-1〕
2)同 放射線科
3)現 神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻 展開医科学領域応用分子医学講座 内分泌/代謝,神経,血液/腫瘍内科学分野〔〒650-0017 神戸市中央区楠町7-5-2〕

下肢先端の異常感覚にて発症し,それがしだいに上行した頭蓋頸椎移行部の硬膜動静脈瘻の68歳男性例を報告した.脊髄表面の静脈圧が上昇した際には,脊髄のpenetrating veinsとmiddle-sized intramedullary veinsの間に存在する弁構造により脊髄周囲の静脈圧が上昇しやすい.その機序により本症例のような下肢優位の症状が出現したものと推察した.本症例のような臨床経過を示したばあいには,頭蓋頸椎移行部の硬膜動静脈瘻も鑑別診断のひとつとして考慮する必要がある.

(臨床神経, 44:171−175, 2004)
key words:頭蓋頸椎移行部, 硬膜動静脈瘻, 脊髄静脈, 中心静脈, 周辺静脈

(受付日:2003年7月4日)