症例報告
ペニシリン耐性肺炎球菌による髄膜炎の1成人例
井桁 之総1）＊, 石黒 幸司1）＊＊, 岡本 幸市2）
1）前橋赤十字病院神経内科〔〒371-0014 群馬県前橋市朝日町3-21-36〕
2）群馬大学神経内科
＊現：公立藤岡総合病院
＊＊現：沼田脳神経外科循環器科病院
ペニシリン耐性肺炎球菌（penicillin-resistance streptococcus pneumoniae，PRSP）による細菌性髄膜炎の成人例を報告した．上気道感染から敗血症を起こし髄膜炎を発症したと思われた．基礎疾患に糖尿病，AIDS，免疫異常による易感染症はみとめず外傷もなかった．入院当初，ampicillin sodium（ABPC），cefotaxime sodium（CTX）を投与したが無効であり，PRSP同定後，panipenem/betamipron（PAPM/BP），vancomycin hydrochloride（VCM）に変更し奏効した．近年，PRSP陽性髄膜炎の症例が多く報告され，いずれも初期投与薬を変更している．今後PRSP感染症の増加にともない，肺炎球菌による細菌性髄膜炎の初期治療の見直しが必要である．
(臨床神経, 44：154−159, 2004)
key words：ペニシリン耐性肺炎球菌, 細菌性髄膜炎, panipenem/betamipron（PAPM/BP）, vancomycin hydrochloride（VCM）, 初期治療
（受付日：2003年3月14日）
