臨床神経学

短報

水溶性メチルプレドニゾロンに薬剤アレルギーを示した多発性硬化症の1例

久我 敦, 二村 直伸, 舟川 格, 陣内 研二

独立行政法人 国立病院機構 兵庫中央病院神経内科〔〒669-1592 兵庫県三田市大原1314〕

症例は34歳の女性である.右顔面と右半身のしびれ感を主訴に受診した.経過と臨床所見から多発性硬化症の急性増悪と診断し,水溶性メチルプレドニゾロン(MP)によるパルス療法(1,000 mg/日×3日間)を開始した.1日目の投与後から体幹と下肢に掻痒感をともなった播種状丘疹が出現した.2日目の投与後には丘疹が全身に広がったため,MPを中止した.これにかわってベタメタゾン(100 mg/日×3日間)の点滴静注療法をおこなったところ,副作用もなく良好な治療効果をえた.パッチテストによって水溶性MPに対する遅延型アレルギーが証明された.ベタメタゾンはMPにアレルギーを生ずるMS急性増悪患者に対する有用な代替治療となったので報告する.

(臨床神経, 44:691−694, 2004)
key words:多発性硬化症, 薬剤アレルギー, メチルプレドニゾロン, ベタメタゾン

(受付日:2004年2月27日)