臨床神経学

症例報告

重篤な多発性単ニューロパチーを呈し,C型肝炎ウイルス感染に関連した混合型クリオグロブリン血症をみとめた全身性血管炎の1剖検例

他田 真理1), 成瀬 聡1), 新井 亜希1), 佐藤 晶1), 田中 惠子1), 朴 月善2), 柿田 明美3), 高橋 均2), 西澤 正豊1), 辻 省次4)

1)新潟大学脳研究所神経内科〔〒951-8585 新潟市旭町通一番町757〕
2)新潟大学脳研究所病理学分野
3)新潟大学脳研究所生命科学リソース研究センター脳疾患リソース解析部門
4)東京大学大学院医学系研究科 神経内科学教室

症例はC型慢性肝炎を有する75歳男性である.3年前からRF高値で進行性に体重減少がみられた.入院2カ月前から左垂れ足が出現,亜急性に運動・感覚障害が進行し,臥床状態となった.著明なるい痩と網状皮斑もみとめた.混合型クリオグロブリン血症と,筋生検で壊死性血管炎の所見をみとめ,HCV感染に関連した血管炎性ニューロパチーと診断した.大量免疫グロブリン療法,ステロイドパルス療法をおこなったが効果は乏しく,肺胞出血で死亡した.剖検で,多臓器の小中血管に高度の壊死性血管炎の所見をみとめた.HCV感染者において,臓器障害が高度で,重篤な多発性単ニューロパチーをきたす,結節性多発動脈炎類似の血管炎を生じる可能性があり注意を要する.

(臨床神経, 44:686−690, 2004)
key words:C型肝炎ウイルス, 混合型クリオグロブリン血症, 多発性単ニューロパチー, 全身性血管炎, 結節性多発動脈炎

(受付日:2004年5月26日)