臨床神経学

原著

筋ジストロフィー患者におけるクレアチン療法の試み

松村 剛1), 横江 勝2), 中森 雅之2), 服部 憲明3), 齊藤 利雄1), 野崎 園子1), 藤村 晴俊1), 神野 進1)

1)独立行政法人国立病院機構刀根山病院神経内科〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕
2)大阪大学大学院医学系研究科神経機能医学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕
3)ビーエフ研究所〔〒565-0873 大阪府吹田市藤白台5-7-1 国立循環器病センター内〕

筋ジストロフィー患者23名をふくむ29名でクレアチンを9週間投与し,前後で筋力,ADL,高次脳機能,心肺機能,MRSなどを評価した.動きやすさなどの自覚的改善が12名でみられ,右大腿四頭筋の定量的筋力が軽度増加した.投与前にエルゴメーター(15ワット15分)を完遂できなかった6名のうち4名は投与後に施行できた.有害事象は10名が訴えたがいずれも軽度で,有害事象による脱落例はなかった.心肺機能や高次脳機能には変化無く,下腿のクレアチンリン酸測定にも有意な変化をみとめなかったが,筋ジストロフィーでもクレアチンが有効な例があると考えられた.今後至適投与法,長期投与の心肺機能への影響などの検討が今後の課題である.

(臨床神経, 44:661−666, 2004)
key words:クレアチン, サプリメント, 筋ジストロフィー, 治療

(受付日:2004年3月15日)