臨床神経学

原著

卵円孔開存を有する脳塞栓症患者の再発に関する研究〜超音波診断による深部静脈血栓との関連から〜

永野 恵子, 大坪 亮一, 矢坂 正弘, 梶本 勝文, 大江 洋史, 長束 一行, 成冨 博章

国立循環器病センター内科脳血管部門〔〒565-8565 大阪府吹田市藤白台5-7-1〕

発症3カ月以内の卵円孔開存を有する脳塞栓症63例に下肢静脈エコーをおこない,深部静脈血栓症(DVT)の有無と治療薬,再発との関連を検討した.DVTを26例にみとめた.2次予防としてワルファリンまたは抗血小板薬が投与された.平均14.6カ月の観察期間中63例中6例に再発をみとめた.DVT陽性の3例は,全例ワルファリンが投与されていたが,再発時INRは1.7未満であり,2例に心房中隔瘤の合併があった.DVT陰性3例は,全例大動脈粥状硬化病変を合併していた.DVT陽性,とくに心房中隔瘤合併例では厳密なワルファリンコントロールが必要なこと,DVT陰性例では動脈硬化の関与が少なくないことが示唆された.

(臨床神経, 44:7−13, 2004)
key words:奇異性脳塞栓症, 右左シャント, 卵円孔開存, 静脈エコー, 深部静脈血栓症

(受付日:2003年4月5日)