臨床神経学

症例報告

上矢状静脈洞血栓症で発症した本態性血小板血症の1例

荒井 元美1), 杉浦 明1)2)

1)聖隷三方原病院神経内科〔〒433-8558 静岡県浜松市三方原町3453〕
2)現 磐田市立総合病院神経内科

52歳の女性が,1999年11月てんかん重積状態になり入院した.頭部MRI所見から上矢状静脈洞血栓症による右前頭葉の静脈性梗塞と診断した.ヘパリンを持続静注し,その後ワーファリン内服に変更した.2000年5月から血小板増加(40万/μl以上)が続いた.2002年7月末から左手の動きが徐々に悪化した.MRI検査では右前頭葉の陳旧性脳梗塞,右放線冠の陳旧性ラクナ梗塞,および右頭頂葉の新しい梗塞巣がみられたが,上矢状静脈洞は開存していた.アスピリン100 mgとワーファリンを併用した.2002年9月から血小板数が60万/μlを超え,本態性血小板血症と診断した.脳静脈洞血栓症で発症し,経過中に本態性血小板血症の診断基準を満たすようになる症例があるので,凝固系だけではなく,血小板数の推移を観察する必要がある.

(臨床神経, 44:34−38, 2004)
key words:上矢状静脈洞血栓症, 脳梗塞, 本態性血小板血症

(受付日:2003年7月4日)