臨床神経学

症例報告

プラバスタチンと関連する多発筋炎の1症例

高木 昭夫, 椎尾 康

虎の門病院神経内科〔〒105-8470 港区虎ノ門2-2-2〕

69歳男性の高脂血症に対してプラバスタチン10 mg/日が投与された.開始2週間後より,全身の関節痛,筋肉痛や筋脱力が出現持続した.薬剤中止後にも約3カ月にわたって症状は進行した.徒手筋力テストでは手指筋や腸腰筋に4レベルの脱力をみとめた.皮膚変化はない.血清CK値は最高943 IU/Lと増加した.筋電図では自発放電をともなう筋原性変化をみとめた.抗核抗体とJo-1抗体は陽性であった.筋病理検査は実施できなかったが,上述の所見から多発筋炎の可能性が高いと推定した.プレドニゾロン内服によりすみやかに症状は改善した.持続する高脂血症に対して,アトルバスタチン投与を開始した.しかし日常動作を障害しない程度の筋・関節痛と脱力の再発があった.類似症例は外国で3例の報告がある.またまれにスタチンによる他種の自己免疫病の報告も散見される.スタチンは免疫系に作用することは知られているが,自己免疫性多発筋炎の誘因となりうるかはまだ不明な点が多い.今後この観点からの分析も必要であろう.

(臨床神経, 44:25−27, 2004)
key words:プラバスタチン, アトルバスタチン, 関節痛, 多発筋炎, 免疫修飾

(受付日:2003年6月14日)