臨床神経学

症例報告

遅発性両側顔面神経麻痺を呈した失調型Guillain-Barré症候群

渥美 正彦1), 北口 正孝1), 千本 裕子1), 西川 正悟1), 峯田 春之1), 中坂 義邦1), 田中 尚1), 薄 敬一郎2)

1)馬場記念病院脳神経内科〔〒592-8555 大阪府堺市浜寺船尾町東4-244〕
2)獨協医科大学神経内科〔〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町大字北小林880〕

症例は38歳男性である.咽頭炎症状の後に,著明な失調,四肢遠位部の感覚障害,軽度の嚥下障害,尿閉,起立性低血圧で発症した.病初期には顔面神経麻痺はなく,四肢筋力低下はごく軽度で,腱反射は四肢で消失していた.深部感覚は保たれており,眼球運動障害はなかった.血清IgG抗GQ1b,抗GD1b,抗GM1b,抗GT1a,抗GD1a抗体が病初期に強陽性を示し,回復期には消失した.失調型Guillain-Barré症候群と診断し,免疫グロブリン大量静注療法を施行した.初期症状はすみやかに改善したが,その後で両側顔面神経麻痺が出現し,回復までに時間がかかった.失調型GBSと病態的連続性が示されているFisher症候群で,同様の経過の顔面神経麻痺が報告されている.遅発性顔面神経麻痺の発症には,Fisher症候群類縁疾患に特有な機序が考えられる.

(臨床神経, 43:548−551, 2003)
key words:失調型Guillain-Barré症候群, 両側顔面神経麻痺, Fisher症候群, 抗ganglioside抗体

(受付日:2003年6月3日)