臨床神経学

短報

早期のステロイド治療が有効であった中枢神経の肉芽腫性血管炎の1例

山田 新一1)*, 熱田 直樹2), 茂木 禧昌1), 橋詰 良夫3), 祖父江 元2)

1)中津川市民病院神経内科
2)名古屋大学神経内科〔〒466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町65〕
現 名古屋大学神経内科
3)愛知医科大学加齢医科学研究所

症例は74歳の女性である.頭痛,発熱と失見当識,自発語の低下や徘徊などの異常行動が急速に進行し来院した.傾眠傾向で従命不可能,軽度の項部硬直をみとめた.髄液中の蛋白量の上昇,頭部Gd造影MRI T1強調画像にて髄膜の広範な異常造影,および脳血管撮影にて中大脳動脈遠位部に多発性の狭窄像をみとめた.以上より中枢神経の肉芽腫性血管炎をうたがい,ステロイドパルス療法を開始した.治療開始後翌日より高次機能障害,意識障害は徐々に改善した.脳生検にて多核巨細胞をともなう肉芽腫性血管炎をみとめた.本疾患の診断は困難であることが多いが早期診断,早期治療により良好な治療効果がえられることを示す症例であった.

(臨床神経, 43:503−506, 2003)
key words:中枢神経の肉芽腫性血管炎, 巨細胞, ステロイド

(受付日:2003年6月4日)