臨床神経学

短報

中脳水道狭窄症,脳室内腹腔シャント不全により高度のパーキンソニズムを呈した1例

徳永 秀明1), 重藤 寛史1), 稲村 孝紀2), 川尻 真和1), 中崎 清之2), 古谷 博和1), 吉良 潤一1)

1)九州大学大学院医学研究院附属脳神経病研究施設神経内科〔〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1〕
2)同 脳神経外科

症例は26歳の男性である.中脳水道狭窄による水頭症に対して脳室腹腔シャント術を施行した.7カ月後に上方注視麻痺,寡動,振戦,筋強剛が出現したが,この時点ではMRI上,水頭症の所見はみとめなかった.症状は進行し無動状態となり,10カ月後に当科に入院した.この時点で,側脳室と第3脳室の拡大をみとめ,シャント抜去術および内視鏡下第3脳室底開窓術施行し,症状改善し2カ月後には歩行可能となった.シャント術をおこなっている症例でパーキンソニズムが出現した時は,画像上水頭症の所見が明らかでなくてもシャント不全をうたがう必要がある.

(臨床神経, 43:427−430, 2003)
key words:パーキンソニズム, シャント不全, 中脳水道狭窄, 水頭症, 頭部MRI

(受付日:2002年3月9日)