臨床神経学

症例報告

特徴的な頭部MRI所見を呈したCNSループスの1例

高橋 輝行1), 国分 裕司1), 奥畑 好孝2), 澤田 滋正3), 水谷 智彦4)

1)日本大学医学部付属練馬光が丘病院神経内科〔〒179-0072 東京都練馬区光が丘2-11-1〕
2)日本大学医学部放射線科〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕
3)日本大学医学部付属練馬光が丘病院内科
4)日本大学医学部内科学講座神経内科部門

症例は28歳の女性である.2001年6月4日,発熱と全身倦怠感を主訴に当院内科へ入院し,全身性エリテマトーデス(SLE)と診断された.6月6日より遠方注視時の複視が出現し,10日に意識障害,全身性痙攣発作を来した.中枢神経系(CNS)ループスと診断し,抗痙攣薬の投与とステロイドパルス療法を開始した.MRIのT2強調画像では,大脳白質を中心に多発性の高信号病変をみとめた.apparent diffusion coefficient画像(ADCI)では,これらの病変の周辺部に高信号域,中心部に低信号域をみとめ,拡散強調画像(DWI)では,その中心部は高信号を呈していた.治療が奏功し,臨床症状,MRI所見は著明に改善した.ADCI,DWIの両者でSLEのCNS病変を捉えた報告はこれまで無く,両画像の併用はCNSループスの病態機序の解明に有用と考えた.

(臨床神経, 43:409−416, 2003)
key words:中枢神経系ループス, みかけ上の拡散係数, 拡散強調画像, 炎症性微小血管障害, 細胞障害性浮腫

(受付日:2003年1月24日)