臨床神経学

症例報告

2度目のγ-グロブリン大量療法開始直後にアナフィラキシー様ショックを呈したCrow-Fukase症候群の1例

高橋 輝行1), 小野 真一1), 小川 克彦1), 田村 正人2), 水谷 智彦2)

1)日本大学医学部付属練馬光が丘病院神経内科〔〒179-0072 東京都練馬区光が丘2-11-1〕
2)日本大学医学部内科学講座神経内科部門〔〒173-8610 東京都板橋区大谷口上町30-1〕

症例は57歳の女性である.2000年8月頃から四肢のしびれと筋力低下,下腿浮腫が出現し,2001年1月に歩行不能となり当科受診した.下肢遠位に強い四肢筋力低下,四肢深部腱反射の低下〜消失,手袋靴下型の感覚障害と四肢末端の関節位置覚消失をみとめた.皮膚は乾燥し粗造で,色素沈着,血管腫の散在,多毛をみとめた.血清のvascular endothelial growth factor(VEGF)が5184pg/mlと著増しており,Crow-Fukase症候群と診断した.末梢神経障害に対してpolyethylene glycol処理ヒト免疫グロブリン(PEG-glob)大量療法(IVIg:400mg/kg/日×5日間)を施行し,筋力が軽度改善したため,同療法を再施行した.その開始直後にアナフィラキシー様ショックが出現したので,直ちにIVIgを中止した.lymphocyte stimulation test(LST)が,投与したPEG-globと同一のロット番号の製剤に対して陽性であったため,PEG-globがアナフィラキシー様ショックの原因と考えた.

(臨床神経, 43:350−355, 2003)
key words:Crow-Fukase syndrome, vascular endothelial growth factor(VEGF), ポリエチレングリコール処理ヒト免疫グロブリン, lymphocyte stimulation test(LST), アナフィラキシー様ショック

(受付日:2003年2月24日)