臨床神経学

症例報告

耳鼻科系感染症から多発脳神経麻痺をともなう肥厚性脳硬膜炎を生じたと考えられた2症例

田島 康敬, 岸本 利一郎, 須藤 和昌, 松本 昭久

市立札幌病院神経内科〔〒060-8604 札幌市中央区北11条西13丁目〕

耳鼻科系感染に関連して生じたと考えられる,脳神経障害を呈した肥厚性脳硬膜炎の2例を報告する.症例1は76歳女性で,左外耳道形成術後に同部位に感染を併発したことから発症した.造影MRIでは,左小脳テントに造影効果をともなう肥厚した硬膜と炎症性肉芽腫様病変をみとめ,最終的には左IX-XII脳神経障害を生じた.さらに,MR venographyでは,左横静脈洞の狭窄とS状静脈洞の閉塞をみとめた.症例2は78歳男性で,右眼痛と右前頭部痛,両側視力低下により発症し,両側眼球運動障害も加わった.造影MRIでは,前頭蓋底から大脳鎌にかけて,篩骨洞,前頭洞から連続する硬膜の肥厚所見をみとめた.採取した硬膜組織より緑膿菌が検出された.

(臨床神経, 43:258−264, 2003)
key words:肥厚性脳硬膜炎, 副鼻腔炎, 外耳道炎, 静脈洞血栓症, 多発脳神経麻痺

(受付日:2002年12月12日)