臨床神経学

短報

ネフローゼ症候群に合併した脳梗塞の1例

永沼 雅基1), 杉本 亮子1), 橋本 洋一郎1), 松浦 豊2), 寺崎 修司2), 内野 誠3)

1)熊本市立熊本市民病院神経内科〔〒862-8505 熊本市湖東1-1-60〕
2)同 脳卒中診療科
3)熊本大学医学部神経内科

症例は47歳の男性である.仕事中に突然,意識を消失し転倒した.当院緊急搬送時には失語および軽度の右上肢麻痺をみとめた.頭部MRI拡散強調画像では左前頭葉〜後頭葉に高信号域をみとめた.脳血管造影では左中大脳動脈起始部に高度狭窄をみとめ,抗血栓療法後に施行した脳血管造影では病変部狭窄の改善をみとめた.既往歴として高血圧,糖尿病,痛風をみとめたが,頸部血管エコー上動脈硬化は強くなく,また不整脈や卵円孔開存など塞栓をうたがわせる所見をみとめなかった.入院時検査で低蛋白,蛋白尿,高脂血症をみとめ,今回はじめてネフローゼ症候群と診断された.ネフローゼ症候群では,凝固線溶系異常および血小板凝集能亢進をともなうことがあり,本症例の脳梗塞発症に関与したと思われた.

(臨床神経, 43:126−129, 2003)
key words:脳梗塞, ネフローゼ症候群, 血小板凝集能, vWF, 中大脳動脈狭窄

(受付日:2002年11月11日)