臨床神経学

第44回日本神経学会総会

シンポジウム4-1:神経再生の新しい戦略
中枢神経系の再生戦略:その基本的コンセプトと現状

岡野 栄之, 吉崎 崇仁, 岡田 誠司

慶應義塾大学医学部生理学教室〔〒160-0016 新宿区信濃町35〕

“損傷された中枢神経は再生しない”という概念は,1920年代の神経解剖学の巨星Santiago Ramóny Cajalの提唱以来,長い間信じられてきた.しかしながら,パーキンソン病において胎児脳移植が治療効果を示す成人脳においても神経前駆細胞あるいは神経幹細胞が存在し,海馬のような特殊な部位においてはニューロン新生がおきるといった明るい可能性を示唆する報告が相次ぎ,「中枢神経系の再生は,feasibleかもしれない.」という期待が高まってきている.本稿では,中枢神経系の再生の概念について整理し,正常神経発生の素過程の再現の中枢神経系の再生戦略上での重要性について議論したい.

(臨床神経, 43:824−826, 2003)
key words:中枢神経系, 再生, 正常発生, パーキンソン病, 脊髄損傷

(受付日:2003年5月16日)