臨床神経学

短報

洞機能異常をみとめた顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの1例

重藤 寛史1), 田村 拓久2), 大矢 寧1), 小川 雅文1), 川井 充1)

1)国立精神・神経センター武蔵病院神経内科〔〒187-8551 小平市小川東町4-1-1〕
2)国立療養所東埼玉病院内科(現 国立療養所川棚病院内科)

洞機能異常をみとめた顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの47歳男性を報告する.肺活量は0.62L(16%)に低下し,高炭酸ガス血症・低酸素血症が睡眠時に増強した.心電図・心エコーで右房・右室の負荷増大がみられた.Holter心電図で上室性洞調律異常がめだち,主に睡眠中に,P波の極性が逆転し,P波の間隔が延長して(最大2.4秒),軽度の頻脈から一過性に徐脈になることを反復した.房室接合部性調律や脚ブロックはなかった.FSHDでは漏斗胸にともなってP波異常は多く,洞性徐脈も少なくないが,呼吸不全とともに睡眠中に洞機能異常がめだつことがある.

(臨床神経, 42:881−884, 2002)
key words:顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー, 洞機能異常, ホルター心電図, 呼吸不全

(受付日:2002年4月10日)