臨床神経学

短報

肺小細胞癌を有し抗GM1抗体が陽性だった,感覚運動ニューロパチーの1例

伊藤 崇1), 榎本(中谷) 雪1), 牧田 圭弘1), 榎本 博之1), 黒田 健司2), 木村 隆1), 橋本 和季1), 箭原 修1)

1)国立療養所道北病院神経内科
2)旭川厚生病院神経内科

症例は62歳女性,進行するしびれと歩行困難,食欲低下を主訴に来院した.四肢,体幹のしびれと四肢の軽度筋力低下,腱反射の消失,四肢運動失調をみとめ,神経伝導検査は感覚神経で導出不能,髄液検査で蛋白の上昇をみとめた.神経生検で有髄線維の著明な減少と神経周膜周辺の血管周囲に単核細胞浸潤あり,当初は血管炎によるニューロパチーと診断し,ステロイドの治療をしたが反応なかった.経過中咳嗽発作があり,縦隔と鎖骨上リンパ節に腫瘍をみとめ,肺小細胞癌と診断した.抗Hu抗体は陰性で,抗GM1抗体が陽性だった.本例は抗GM1抗体陽性の傍腫瘍性末梢神経障害と考えられた.

(臨床神経, 42:878−880, 2002)
key words:感覚運動ニューロパチー, 肺小細胞癌, 抗GM1抗体, 傍腫瘍性末梢神経障害

(受付日:2001年12月15日)