臨床神経学

症例報告

特発性血小板減少性紫斑病をともなった片頭痛性脳梗塞の1例

南里 和紀1)2), 新山 和秀1), 内海 裕也1), 関根 成郎1), 加藤 陽久1), 向後 かずさ1)2), 森原 康之1)2), 林 徹1)

1)東京医科大学第三内科〔〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-7-1〕
2)現 東京医科大学八王子医療センター神経内科〔〒193-0998 東京都八王子市館町1163〕

症例は31歳男性である.2000年1月頃より週1回程度の片頭痛発作をくりかえしていた.2001年1月,閃輝暗点,拍動性頭痛後,左同名半盲が出現した.血小板数8万/μlと血小板減少,頭部MRI FLAIR画像上,右後頭葉,海馬傍回に高信号域をみとめ,頭部MRA・脳血管撮影では右後大脳動脈に分節状狭窄・閉塞所見をみとめた.片頭痛性脳梗塞と診断し,オザグレルナトリウム,塩酸ロメリジンを投与した.血小板減少については特発性血小板減少性紫斑病と診断し,プレドニゾロンを投与した.これらの治療後片頭痛発作は消失した.本症例では特発性血小板減少性紫斑病による血小板崩壊,セロトニンの放出が片頭痛性脳梗塞の発症に関与した可能性が考えられた.

(臨床神経, 42:868−872, 2002)
key words:片頭痛, 脳梗塞, 特発性血小板減少性紫斑病, セロトニン

(受付日:2002年4月19日)