臨床神経学

原著

若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)における寒冷麻痺の症候学的・電気生理学的検討

鬼島 正典1), 平山 惠造2), 中島 祥夫3)

1)千葉大学神経内科
現:JR東京総合病院神経内科〔〒151-8528 渋谷区代々木2-1-3〕
2)千葉大学神経内科〔〒260-0856 千葉市中央区亥鼻1-8-1〕
3)同 生理学第一

若年性一側上肢筋萎縮症(平山病)では寒冷によって患肢の筋脱力が急速に増悪する寒冷麻痺が高率にみられる.その病態機序を解明する目的で寒冷麻痺が病歴上確認された平山病11例,正常対照10例に寒冷麻痺誘発試験をおこなった.平山病11例中9例でのみ麻痺が誘発され,尺骨神経刺激による小指外転筋の電気生理学的検討では,寒冷麻痺出現時に高頻度刺激で複合筋活動電位(M波)の振幅は減衰し,抗コリンエステラーゼ薬(edrop-honium)投与によりさらに減少した.波形分析で振幅減衰時にM波の伝導遅延がみられた.以上から寒冷麻痺の機序として脱神経後の神経再支配が繰返し盛んにおこる筋での筋細胞膜側での伝導障害の可能性が推測された.

(臨床神経, 42:841−848, 2002)
key words:若年性一側上肢筋萎縮症, 平山病, 寒冷麻痺, 寒冷麻痺誘発試験

(受付日:2002年12月3日)