臨床神経学

症例報告

亜急性脊髄炎で発症し乾燥症状が明らかでなかったシェーグレン症候群の1例

新井 智恵子1), 古谷 力也2), 牛山 雅夫2)

1)健和会病院内科〔〒395-8522 飯田市鼎中平1936〕
2)同 神経内科

症例は左体幹・両下肢の異常知覚,左側胸部の疼痛,左足跛行で発症し,精査の結果乾燥症状を欠くシェーグレン症候群にともなう脊髄障害と診断された62歳男性である.MRIのT2強調像で胸椎6〜7領域に高信号域をみとめた.プレドニゾロン60mg/日より治療を開始したところ,筋力低下,歩行障害は完治し,知覚障害も軽快した.臨床症状の改善とともにMRIの高信号域も縮小した.シェーグレン症候群では乾燥症状をみとめなくても脊髄障害を合併することがあるため,原因不明の脊髄障害でとくに胸髄3〜8領域のばあいにはシェーグレン症候群を精力的に検索する必要がある.発症機序として血管炎による虚血性変化が示唆された.

(臨床神経, 42:613−618, 2002)
key words:シェーグレン症候群, 脊髄障害, 乾燥症状, ステロイド療法

(受付日:2002年4月10日)