臨床神経学

症例報告

再発性多発脳出血を呈した結節性多発動脈炎の1例

清水 優, 本間 真理, 遠藤 一博, 渡辺 亜貴子, 星 明彦, 松浦 豊, 斎藤 直史, 山本 悌司

福島県立医科大学医学部付属病院神経内科〔〒960-1295 福島県福島市光が丘一番地〕

症例は72歳女性である.多発単神経炎で発症し,ステロイド,cyclophosphamideにて症状改善後に傾眠状態となり来院した.画像上,両側大脳浅部に多発脳出血と肥厚性硬膜炎をみとめた.MRAおよびhelical CTでは明らかな血管の異常はなかった.入院中,3度の脳出血があり,3度目の脳出血の際には開頭血腫除去をおこなった.生検標本上,脳実質に血管炎症所見なく,アミロイドアンギオパチーをみとめた.これらの所見から,肥厚性硬膜炎による皮質から硬膜へ連絡する静脈系の還流障害を基盤とし,アミロイドアンギオパチーによる血管脆弱性が時間的,空間的に多発する脳出血を惹起したものと推定された.

(臨床神経, 42:603−607, 2002)
key words:結節性多発動脈炎, 脳出血, アミロイドアンギオパチー, 肥厚性硬膜炎

(受付日:2002年3月7日)