臨床神経学

短報

門脈低形成による門脈大循環シャント脳症で大脳白質病変を生じた1例

結城 奈津子, 吉岡 亮, 山谷 洋子, 斉木 三鈴, 廣瀬 源二郎

金沢医科大学神経内科〔〒920-0293 石川県河北郡内灘町大学1-1〕

症例は49歳女性である.肝疾患の既往,輸血歴はない.約半年前より傾眠傾向,頻回の転倒,異常行動,手指振戦が生じ,当科へ入院した.意識障害(JCS: 20),見当識障害,両側錐体路徴候,羽ばたき振戦をみとめた.高アンモニア血症(217μg/dl)をみとめたが,腹部CT,肝生検で肝硬変の所見はなかった.腹部血管造影で門脈低形成と門脈大循環シャントをみとめた.頭部MRI T2強調画像で,両側大脳深部白質,内包後脚に高信号域をみとめ,同部の脱髄性病変が示唆された.一次的な門脈低形成により二次的に門脈大循環シャント脳症が生じ,大脳白質病変を生じた一例と診断した.

(臨床神経, 42:544−547, 2002)
key words:門脈大循環シャント脳症, 門脈低形成, 高アンモニア血症, 大脳白質病変, MRI

(受付日:2002年2月7日)