臨床神経学

原著

高次脳機能障害を伴う軽症の頭部外傷慢性期の脳循環代謝―MRI画像上異常所見がない20症例のPETによる検討―

蒲澤 秀洋1), 小川 鉄男1), 飯田 昭彦2), 松原 充隆3)

1)名古屋市総合リハビリテーションセンター, リハビリテーション科〔〒467-8622 名古屋市瑞穂区弥富町字密柑山1-2〕
2)同 放射線診断科
3)同 神経内科

頭部外傷後に高次脳機能障害を呈するが,MRI上異常所見がない20例で標識酸素ガス持続吸入法のPETによって脳循環代謝を検討した.高次脳機能障害としてWAIS-Rの全検査知能指数(FIQ)をもちいた.その結果,半数以上の症例の脳循環代謝は相対的luxury perfusionを呈していた.FIQの正常群と比較して,低下群では両側の前頭葉,側頭葉および後頭葉において酸素消費量が有意に低下していた.追跡評価した13例のFIQスコアは有意に改善し,FIQの改善にともなって両側の前頭葉,側頭葉および右後頭葉において酸素消費量が有意に増加した.以上より,頭部外傷後の高次脳機能障害には脳全般,とくに両側の前頭葉と側頭葉における神経回路の機能不全と機能回復が重要と考えられた.

(臨床神経, 42:512−518, 2002)
key words:軽症頭部外傷, 高次脳機能障害, PET, WAIS-R, 相対的luxury perfusion

(受付日:2002年3月6日)