臨床神経学

短報

EcoRI/BlnI二重消化後に2つの短断片をみとめ診断が困難であった顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの1家系

松村 剛1)2), 衛藤 昌樹1)3), 後藤 加奈子2), 斉藤 利雄1), 野崎 園子1), 藤村 晴俊3), 神野 進1)

1)国立療養所刀根山病院神経内科〔〒560-8552 大阪府豊中市刀根山5-1-1〕
2)国立精神・神経センター神経研究所疾病研究第一部〔〒187-8502 東京都小平市小川東町4-1-1〕
3)大阪大学大学院医学系研究科生体統合医学神経機能医学講座神経内科学〔〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-2〕

顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(以下FSHD)の遺伝子診断は,ゲノムDNAをEcoRI消化後にプローブp13E-11をもちいて検索し,4q35のKpnI繰返し配列欠失を証明することでおこなわれている.10q26にも相同性の高い配列があるため,鑑別に繰返し配列内のBlnI認識部位の有無を利用したEcoRI/BlnI二重消化法が併用される.今回われわれは二重消化後にEcoRI短断片を2本みとめたFSHDの1家系を経験した.家族全員の検索から,一方の短断片は4q35様の繰返し配列が,染色体間組換えで10番染色体に存在したものと判明した.4q35と10q26の染色体間組換えは高頻度のため,FSHDの遺伝子診断では両親をふくむ家族員を同時に検索することが重要である.

(臨床神経, 42:313−316, 2002)
key words:顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD), 遺伝子診断, EcoRI/BlnI二重消化法, 染色体間組換え

(受付日:2002年2月28日)