臨床神経学

原著

無/低セルロプラスミン血症をともなった多系統萎縮症─2剖検例での脳内鉄沈着の検討

栗崎 博司1), 四茂野 はるみ1), 村山 繁雄2), 蛇沢 晶3)

1)国療東京病院神経内科〔〒204-8585 東京都清瀬市竹丘3-1-1〕
2)東京都老人総合研究所神経病理部門
3)国療東京病院病理科

無セルロプラスミン(Cp)血症をともなった多系統萎縮症(MSA)の68歳男性と低Cp血症の61歳男性を報告した.臨床症状はパーキンソニズムを中心とし,小脳症状・自律神経症状・咽喉頭麻痺をともない,画像では,橋萎縮,被殻病変がみられた.神経病理検索では橋・小脳・黒質・線条体にグリア細胞体内嗜銀性封入体(GCI)をともなう典型的なMSA病変がみられたが,鉄沈着は黒質と被殻だけにみられた.Cp正常と考えられるMSAとパーキンソン病でも同様の鉄沈着がみられ,2症例の鉄沈着が直接病変に関連するとは考えられない.しかし,MSA16例中4例でCp低下がみられたことから,Cp低下とMSA病変は偶然の合併とは考えられない.

(臨床神経, 42:293−298, 2002)
key words:無セルロプラスミン血症, 多系統萎縮症, 脳内鉄沈着

(受付日:2002年4月10日)