臨床神経学

短報

メチルプレドニゾロン超大量療法で中枢・末梢の伝導ブロックが改善したADEMの1例

上原 明子1), 岡本 裕嗣1), 西垂水 和隆1), 宇都 正2), 久保田 龍二1), 城之園 学1), 榮樂 信隆1), 有村 公良1), 納 光弘1)

1)鹿児島大学医学部第三内科〔〒890-8520 鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8丁目35-1〕
2)国立療養所南九州病院神経内科〔〒899-5293 鹿児島県姶良郡加治木町木田1882〕

症例は24歳女性である.皮疹・発熱出現後,意識障害,四肢弛緩性麻痺をきたした.抗生剤・抗ウィルス剤・免疫グロブリン投与およびステロイドパルス療法は無効であった.神経生理検査上,中枢・末梢神経に伝導ブロックをみとめた.ADEMを強くうたがい,脊髄損傷急性期の治療量に順ずるメチルプレドニゾロンの超大量投与(5.4mg/kg/時間×47時間)をおこなったところ奏効した.神経生理学的異常所見は正常化し,後遺症なく回復した.メチルプレドニゾロン超大量投与は,ADEMその他の重症脳脊髄炎症例において従来の治療が無効であったばあい,治療の一選択肢となる可能性があると思われる.

(臨床神経, 42:237−239, 2002)
key words:急性散在性脳脊髄炎, 伝導ブロック, メチルプレドニゾロン超大量投与

(受付日:2001年9月22日)