臨床神経学

症例報告

子宮体癌により血管炎とTrousseau症候群を呈した若年性脳梗塞

清水 優子, 内山 真一郎, 森 豪志, 堤 由紀子, 竹内 恵, 岩田 誠

東京女子医科大学付属脳神経センター神経内科〔〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1〕

症例は27歳女性である.無菌性髄膜炎ののち,右頸部圧痛,右顔面のしびれ感と中枢性の軽度顔面麻痺,左上下肢のしびれ感と脱力が出現した.脳幹脳炎をうたがいメチルプレドニゾロン・パルス療法を施行し軽快したが,頭部MRIで右頭頂葉に出血性脳梗塞を呈した.血小板・凝固・線溶系マーカーはいちじるしく高値,右頸動脈の低エコー輝度プラークと血流速度の低下をみとめたことから血管炎による血栓症と考え,ワルファリンとプレドニゾロンを開始した.その後,子宮体癌が発見された.子宮体癌の根治術後,凝固亢進状態は是正され,右頸動脈の低エコー輝度プラークと血流速度は改善した.本例は子宮体癌により,Trousseau症候群と,免疫異常にともなう血管炎を呈したと考えられた.

(臨床神経, 42:227−232, 2002)
key words:脳梗塞, Trousseau症候群, 子宮体癌, 血管炎

(受付日:2001年11月22日)