臨床神経学

症例報告

亜急性の痴呆で発症した一酸化炭素中毒の1例

塩手 美冬, 城戸 由紀子, 林 健, 松原 悦朗, 真邊 泰宏, 東海林 幹夫, 阿部 康二

岡山大学大学院医歯学総合研究科神経病態内科学〔〒700-8558 岡山市鹿田町2-5-1〕

初期障害をみとめず亜急性に進行する痴呆で発症した一酸化炭素(CO)中毒の1例を報告した.症例は67歳女性で,2001年1月21日から無口になり服の着方をまちがえるなどの行動異常が出現した.その後痴呆症状・歩行障害が進行し,2月15日には無言無動で寝たきりとなった.頭部MRIで両側淡蒼球のT2高信号域と,両側大脳皮質下深部白質にびまん性にT2高信号域の急速な増大をみとめ,CO中毒をうたがい病歴を詳細に再聴取した.その結果,発症約3週間前に豆炭使用歴をみとめCO中毒と診断した.3月1日より高圧酸素療法を開始し,痴呆症状と歩行障害は著明に改善した.初期障害をみとめず亜急性の進行性痴呆で発症したCO中毒の報告はなくまれな症例と考えられた.

(臨床神経, 42:212−215, 2002)
key words:一酸化炭素中毒, 痴呆, 高圧酸素療法

(受付日:2001年9月21日)