臨床神経学

症例報告

画像上脳腫瘍と鑑別困難な大病巣を呈し,髄液中の抗神経抗体上昇と血清・髄液中の抗ribosomal P抗体高値をみとめた全身性エリテマトーデスと皮膚筋炎のオーバーラップ症候群

加納 聡子1)*, 中森 知毅1), 今福 一郎1), 須藤 明2), 猪森 茂雄3), 村山 繁雄4), 國本 雅也1)**

1)横浜労災病院神経内科
2)同 内科
3)同 脳神経外科
4)東京都老人総合研究所神経病理部門
現 東京大学神経内科〔〒113-8655 東京都文京区本郷7-3-1〕
**現 国立国際医療センター神経内科

症例は50歳男性.痙攣発作を発症した全身性エリテマトーデスと皮膚筋炎のオーバーラップ症候群の症例であり,一側大脳皮質から皮質下に腫瘍と鑑別困難な巨大病巣がみられた.生検病理像はフィブリノイド壊死,血管周囲の細胞浸潤のみではなく中心部壊死をともなうミエリンの貪食をともなっていた.中枢神経ループスは血管障害が多いとされているが,本症例では脳病変が一部可逆的な経過をとり麻痺等の神経症状も軽度で,ステロイド反応性良好であった.また中枢神経ループスの診断に,血清抗ribosomal P抗体および髄液抗神経抗体の測定は,有用であると考えた.

(臨床神経, 42:197−201, 2002)
key words:全身性エリテマトーデス, 皮膚筋炎, 脱髄, 抗神経抗体, 抗ribosomal P抗体

(受付日:2001年3月9日)