臨床神経学

短報

健側眼に垂直性解離性眼振をともなったnon-paralytic pontine exotropiaの1例

中曽 一裕, 吉本 祐子, 植田 圭吾, 佐々木 清博

国立浜田病院神経内科〔〒697-8511浜田市黒川町3748〕
現 鳥取大学脳神経内科

症例は74歳女性.複視で発症し,当初健側眼のみに上方注視眼振をともなったnon-paralytic pontine exotropiaを呈し,上方注視眼振消失後,内側縦束症候群を経て軽快した.本症例は眼球運動障害以外の神経症状をともなわず,頭部MRI上,橋上部被蓋傍正中部に限局する微小梗塞をみとめた.本症例では,急性期に患側眼の垂直運動制限をみとめており,健側眼の上向き注視眼振は患側眼の垂直方向運動制限が消失すると共に軽快した.このことから本症例の上向き注視眼振はnon-paralytic pontine exotropiaや内側縦束症候群など核間性眼球運動障害でみとめられる健側眼の解離性水平性眼振と同様,両眼に同等の神経支配量が加わった際の,健側眼の相対的過剰興奮により生じたものと考えられた.

(臨床神経, 42:181−184, 2002)
key words:non-pralytic pontine exotropia(NPPE), 内側縦束(MLF)症候群, 解離性眼振, 垂直性眼振, Heringの法則

(受付日:2001年2月1日)