臨床神経学

症例報告

脳波にて周期性同期性放電(PSD)を呈した急性麻疹脳炎の1例

岡本 憲省, 奥田 文悟

愛媛県立中央病院神経内科

症例は18歳男性.麻疹による発疹の出現6日後より痙攣と意識障害が出現し(第1病日),抗てんかん薬が開始されるが痙攣重積状態となった.入院時の髄液検査で単核球優位の細胞数増加と蛋白の上昇をみとめ,臨床症状と併せて急性麻疹脳炎と診断した.人工呼吸管理下で鎮静し,免疫グロブリン,ステロイドホルモンの投与を開始した.第4病日の脳波で周期性同期性放電(PSD)がみとめられた.ウイルス抗体価では,血清で麻疹ウイルス抗体価が有意に上昇していたが,髄液では抗体価の上昇はみとめられなかった.PCR法によるウイルス遺伝子の検索でも,麻疹,単純ヘルペス,水痘・帯状ヘルペスのいずれも検出されなかった.脳波上のPSDは第20病日には消失し,発症1カ月後には後遺症状を残すことなく回復した.急性麻疹脳炎において脳波上PSDを呈した報告例はきわめて少ないが,PSDを呈するウイルス性脳炎との鑑別上,麻疹もその1つとして考慮すべき疾患であると考えられた.

(臨床神経, 42:167−170, 2002)
key words:急性麻疹脳炎, 周期性同期性放電, 脳波, 痙攣重積

(受付日:2001年12月25日)